kinzo1956

「ある男」(映画)石川慶 リフレクションが内面を映します。 ある男は、鏡の中の自分の顔に殺人犯の血筋を見い出して怯えますが、死して幸福を想出の未来に繋げます。 別のある男は、鏡の後姿に己の出自を想い起して苦しみますが、生きて現実を… https://t.co/72KvUvJZEI

「ファントム・スレッド」ポール・トーマス・アンダーソン 嘗ては光と音の過剰と不均衡が物語と相俟ち観客を圧倒したものです。 しかし、完璧な映画と謂うなら、寧ろ此方でしょう。今や外連味なく孤高の美を纏います。まるで自伝のような姿が現身ならば、亡霊は応えず銀幕が閉じるのも道理です。

「花咲くころ 」 エクフティミシュヴィリ & グロス 民族紛争を直接描かずとも、光量不足に掠れた映像は、敵味方の混淆し停滞する社会を写します。 選択の機会なく破滅か因襲かの二者択一を強いられるヒロイン達の感情を捉えて、青春の一コマでは済まない彼の地の現実をフィルムに収めています。

「三度目の殺人」 是枝裕和 裁判所と鉄格子の内外そして過去と現在の何れにしても一にする真実はないと言い切ります。それなら往時の望遠レンズに見守られた子供達が甦る筈はありません。 代わりに、映像と筋立そして大人の演技を誂えてまで創り上げた多義的な世界。それらが最期に観客に届きます。

「 愚行録」 石川慶 成功要因は引き伸ばされた「序」のサスペンスと抑制された「破急」の多義性にあります。例えばクライマックスの惨劇に音は無く背後から遠目に描きます。ましてホラーの技法に溺れることなく、愚行とは何かと煩く語る愚も犯しません。 それを可能にしたのは全編を貫く規律です。