家にいるのにホームシック
家族不在の家で展開する、新世代ホームドラマ
ポン・ジュノ、ジャ・ジャンクーが
絶賛した才能
2010年、数々の国際映画祭に招致された廣原監督作『世界グッドモーニング!!』。バンクーバー国際映画祭では新人賞グランプリを授賞。審査員のポン・ジュノ、ジャ・ジャンクー監督らが「日本の社会問題を、若者の目線を介して新鮮に描いた、真に有望な映画監督」と称賛した。

その廣原監督の劇場デビュー作となる本作『HOMESICK』は、園子温、荻上直子、石井裕也らの商業長編監督デビュー作を製作してきたPFFスカラシップの第22作目となる作品だ。
家にいるのに家が恋しい
ある日突然、無職になった主人公30歳。両親、妹不在のひとりで暮らす実家は引き渡しが迫っているが行くあてもやりたいこともなく…。

「家にいるのに家が恋しい」。こんな感覚を持ったことはないだろうか。生まれた頃から物が溢れ、人々が夢や希望を持たなくなったとも言われる現代社会。やりたい事とは。自分のいるべき居場所とは───。

27歳の廣原監督が描く新世代ホームドラマ『HOMESICK』は、悩める若者を視点に、現代の若者像、家族像を浮き彫りにする。

30歳の主人公に突然訪れた夏休み。夏らしい爽やかな映像がちりばめられた本作は、8月10日よりオーディトリウム渋谷にて公開。
現代社会の若者像、家族像
試写会で観た各世代の反応は?
8/4に開催されたcoco独占試写会後には、廣原監督と若手社会学者・西田亮介氏によるトークショーが行われ、"若者の今"をテーマに、映画『HOMESICK』が解説された。

「昭和の超克」と「成熟」がキーワード
西田:映画を見て「昭和の超克」と「成熟」という2つのキーワードが思い浮かんだ。ある意味、昭和をノスタルジックに描いた映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の反転と見ることが出来る。高度経済成長の中、貧しくも温かな家族や今後の夢が描かれた『ALWAYS〜』のその後はどうなったかを『HOMESICK』は描いている。例えば昭和では「家族で食卓を囲んでいた」が、今ここに家族はいない。また、昭和では到達点であったマイホームが、今や「家」そのものが負の資産となっている。 ところが映画では、その「家」に3人の子供たちがやって来る。子供たちと主人公との相互作用のなかで、「成熟」するのかしないのか、ということがポイントとなっている。「昭和の超克」をある意味ネガティブに捉えつつも、普遍的な若者の青春物語として結び付けていくところが、とても興味深かった。
今という時代は若者にとって、しんどい時代だと思う。最近の新入社員のある調査では、一生勤めたいと希望する割合が非常に高く、起業したいという人の割合はすごく低い。安定したいと思っていても転職せざるを得ない現代の状況について、この映画は現代の出口のなさ、昭和の家族の「宴の後」のような感情をよく表していると思う。

一箇所に留まり続けて何かを発見するという事に意義を感じた
廣原:本作ではバラバラになった家族が描かれているが、『ニンゲン合格(監督:黒沢清)』という映画を観た時に、そこに出てくる人たちは父親、母親という役割を演じるわけでなく、ばらばらな“個”が集まって家族になっている印象を受け、それが正しいと自分では思った。ダグラス・サークの作品からも愛している人と囲む食卓が寂しくて、そこがゴールではないと教わった。
映画とは、なかなか答えを提示してくれず問題を浮き彫りにする役目が大きいが、本作でも、外の世界に出て拡がろうとするのではなく、一箇所に留まり続けてそこで何かを発見するという事の方が、自分達の人生に近く、意義があるのではないかと思い、この作品を撮った。 主人公は家がなくなり仕事もなくなったが、「若いから大丈夫でしょ」で普通なら終わる話かもしれない。ただ、その先に何があるのか、また同じことを繰り返すのか、何のために生きているのか、子供みたいな悩みに立ち返るわけですが、こういう言葉には出来ない事を表現したかった。
“幸せはゴールではなくある瞬間に訪れるもの”ではないのか、と思っていて、そういう瞬間を映画で撮り続けていきたいと思います。
試写会で観た映画ファンの反応は?
面白かったです☆苦しいところを暗くなく、明るいわけでもなく、淡々と美しく、でも美しいだけでもなく、等身大に切り取っている素敵な映画だと思いました。(30代・女性)
今の時代とテーマが合っていて、とても考えさせられました。
恐らくこれから主人公みたいな若者は増えるんじゃないかと思いました。(40代・男性)
私は22歳で、なんとか生きていければお金持ちにならなくても、就活で大企業に入らなくてもいいと思っています。しかし本作を見て自分の中でその考えが変わりつつあります。(20代・女性)
非常に興味深く、私の周りでも見かける若者が多数いた。(30代・女性)
自由ってなんだろう、意外とある意味残酷な事なのかなと思いました。(40代・女性)
子供が元気いっぱいで、見てて楽しかった。子供の無邪気なパワーは、すごい。まともに相手してると自分も童心に戻れそう。(40代・男性)
主人公の行動は、30代の私の世代にも当てはまるようにも思えました(共感はしませんが主人公の行動が分かるという部分が多々ありました)。(30代・女性)
最初、主人公の駄目男っぷりに、気持ちもダウンしがちだったが、がきんちょトリオとの絡みから、俄然楽しくなる♪4人の力いっぱい遊ぶシーンがカラフルでポップでホント大好き♪(40代・女性)
今日は監督と同世代の息子と一緒に鑑賞しました。しかも失業中。
わたしとは違う観点からでしょうけど、面白かったと言っていました。(50代・女性)
普遍的なテーマを鋭い視点で描き出せる監督さんだと感じました。次回作、今からとても楽しみです。(40代・女性)
私自身、主人公と同じように地方都市出身、団地育ち、一軒家の実家暮らし、失業経験ありと、設定にシンパシーを感じて観ました。
(20代・女性)
心寂しく無気力だけど何をしていいのか分からずドンヨリとした雲で蒸し暑いだけの日々。そんな中でも一時の光が差して爽やかな風が一瞬吹く、それが子供達との触れ合いの時だった様な気がする。(40代・男性)
自分で何をどうしたら充実感を得られるのか?そんな混沌とした気持ちの行き場が見つからない。でも、そんな想いは、若者だけが持っているものではなく、ふとした瞬間、だれもが感じ得る事ではないのかな?!とも思います。
(50代・女性)
印象に残った絵がふたつあった。どこかの教室にイルカの映像を映して二人で見るシーン。草っぱらで風船を空に放すシーン。
(50代・男性)
相米監督の「夏の庭」が思い起こされた。
(40代・男性)
試写会後に行ったアンケートの内容から抜粋しています。
アンケートにご協力いただいた試写会参加者29名の皆さん(順不同)
作品紹介
30歳。失業した。
限りなく自由で、どこにも行くあてがない夏休み。
勤め先の社長が夜逃げして無職になった健二、30歳。母は何年も前から行方知れず、父は辺鄙な土地でペンションを経営、妹は海外放浪中。ひとりで住んでいる実家の引き渡しが迫っているが、行くあてなどない。やりたいこともなく、無為に過ぎていく日々。そんな時、夏休み中の小学生男子3人組が水鉄砲や水風船で家に奇襲をかけてきた!健二はホースの水で応戦、闘いごっこの果てに3人組は健二を水魔人と名づけ、毎日のように家にやって来るようになる───。
監督紹介
廣原 暁 (ひろはら・さとる) 監督・脚本
1986年5月16日生まれ、東京都出身。武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域修了。黒沢清、北野武に師事。

2009年に制作した『世界グッドモーニング!!』が2009年、京都国際学生映画祭準グランプリを受賞。更に、2010年、ポン・ジュノ、ジャ・ジャンクーらが審査員を務めた第29回バンクーバー国際映画祭ドラゴン&タイガー・ヤングシネマ・アワードにてグランプリ受賞を皮切りに、第61回ベルリン国際映画祭など、国内外の多数の映画祭にて上映される。

他作品に『あの星はいつ現はれるか』(オムニバス映画『紙風船』の第一話)(11)、東京藝大修了作品『返事はいらない』(11)など。本作『HOMESICK』で第22回PFFスカラシップを獲得、劇場公開デビューを果たす。また、本作公開同時期に、メイン劇場であるオーディトリウム渋谷では、これまでに発表した監督全5作品を一挙に上映する「廣原 暁 監督特集」を実施する。
【過去のPFFスカラシップ作品】
第19回作品
石井 裕也
川の底からこんにちは
第17回作品
熊坂 出
パーク アンド ラブホテル
第14回作品
内田 けんじ
運命じゃない人
第13回作品
荻上 直子
バーバー吉野
第4回作品
園 子温
自転車吐息
『川の底からこんにちは』  『パーク アンド ラブホテル』© PFFパートナーズ  『運命じゃない人』PFFパートナーズ  『バーバー吉野』PFFパートナーズ  『自転車吐息』ぴあ、アンカーズ・プロダクション 
Photo Gallery
    HOMESICK ホームシック
    【監督・脚本】 廣原暁
    【出 演】 郭智博、金田悠希、舩崎飛翼、本間 翔、奥田恵梨華
    【上映時間】 98分
    【配 給】 マジックアワー
    8月10日(土)より、オーディトリウム渋谷 他全国順次ロードショー
    「廣原 暁 監督特集」同時期開催!!
    ※廣原監督過去作/廣原監督セレクト作品の上映
    ※オーディトリウム渋谷のみ
    (C) PFFパートナーズ/東宝
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